ヨセフ・コウデルカって誰?
写真展Josef Koudelka / Returning
場所:Museum of Decorative Arts
期間:2018/3/22-9/23
コウデルカの写真について
彼の写真はシリーズやその時期によって変化が大きい。例えばかつてはずっと『人』を撮り続けていたのに、現在は人ではなく自然や環境、構造物などをメインに撮影している。
その中でも彼の写真に共通してみられる特徴が
・白黒フィルムのみ
・異常に強いコントラスト
・ストリートフォト/スナップがメイン
・写真の中に意味合いが強い
彼の作品群の中で異端なのが、最も有名な”Invasion”のシリーズ。つまりプラハの春の際の写真である。そもそも彼はフォトジャーナリストではない。従って報道写真は撮らないし、記事も書かない、趣味としての写真が職業に転じた人間だ。
プラハの春とコウデルカ
では彼はなぜプラハの春の写真で有名になり、今でも代表作となっているのか。それは彼の祖国であったからに違いない。当時彼はジプシーの撮影に出ていたが、プラハの民主化運動とそれに対してのソ連の軍事介入の噂を聞きつけてプラハに帰ってきたのだ。そして軍事介入がついに始まった。そして彼が言うには決して「報道写真を残そうと思って撮った」訳ではないそうだ。ただその惨状に対して自分ができることは何かを考えていたら気づけば写真を撮り続けていた。危険な行為であると言う自覚はなかったらしい。そしてその写真群は秘密裏に国外へ持ち出されて、彼や家族の身に危険が及ばぬように匿名の写真家からとして世界へ公表されていった。それが唯一にして最大の彼の報道写真だった。
“I think that these photos of mine have mainly a documentary value. But maybe in the best of them they and whos Crech What’s more than just that. What is important in the photographs is not who’s a important is that one person has a gun and the other hasn’t. And the one who hasn’t is, in fact the stronger.even though that’s not immediately apparent”
Josef Koudelka, 1990
重要なのは銃を持った人々よりも、持ってなかった人たちの方が強かったということなんだ。まさにプラハの春を象徴するような言葉。この時の彼の写真をじっくりみているだけで当時の様子などか結構わかってくるので興味ある方はぜひみてほしい。
彼は本物の流浪の旅人だった
プラハの春後に亡命した彼は、次のシリーズの撮影に取掛った。”Exiles”(亡命者、流刑者)だ。この際に彼は長く長く旅をする。「僕はフラットを借りるお金で旅をすることができることを知っているんだ。そして僕はみんなが『帰る場所』と呼ぶものを必要としていない」
本当に彼は旅を続けます。ひたすら各地の人々の様子を撮影して、撮影するものが全くなくなったと思ったら次の場所へ移動する。こういったことを続ける。本当に流浪の旅とは彼のようなことを言うのだろう。その成果か、各地で本当に素晴らしい作品を撮影している。ただ写真に没頭すればこんな写真が撮れるのだろうかと思わされるようなものばかり。
彼のこのシリーズが旅するストリートフォトグラファーの究極系だと思わされてならない。いつか少しでも彼のような美しく面白い写真を旅先で撮ってみたいものである。
近年のパノラマ写真について
近年のシリーズはパノラマで撮影した自然や風景の写真で、これまでのシリーズとは一風変わったものになっている。「破壊された自然や建築物」のようなテーマで撮っていて、自然環境的な視点で評価されているらしい。正直に言うとこれまでの人物の写真や旅の写真の方がずっと好きだった。でも実際にパノラマの迫力で展示を見てみるとこれがなんとも面白い。被写体はもちろんなのだが、パノラマで撮っているだけでこうも違って見えるのか。
僕は基本的に風景写真を撮ることにあまり興味を持てないたちなのだが、こうやってやり方を少し変えてみれば結構違うんじゃないかと思わされた。ちょっとそのうち挑戦してみたい。
まとめ
まぁ色々書いたけど、要するに大好きな写真家の展示に行ってきたよって話。本当に良かった。チェコ出身で一番好きな写真家かもしれない。(ヨセフ・スデックも捨てがたいけど好み的な意味では)
写真が興味ない人でも、チェコやプラハの春関係の歴史なんかに興味があるひとは”Invasion”のシリーズだけでも見てほしい。感じるものがきっとあるはず。